腕の毛がなくなった。
このところ鉋(カンナ)や鑿(ノミ)を研いで、その試し切りをしていたせいだ。
剃る毛がなくなった。
試し剃りができる素材が欲しいと思う。
ホームセンターで売っていたら買うぞ。
そこで最近は指先で刃に触れるワザを試みている。
指というのはとにかく敏感で、ナノサイズの隆起も感じるそうだから、刃先の状態も触ってみたら解る。
昨日は一台のカンナ刃を研いだが、なかなか刃がつかない。
よく切れるノミの刃先を触って比べたら確かに違う。
切れる刃は針先に触れたときのように滑りがない。
触れたらピタッと動きを止められるような感じだ。
とまあ、こういう話はやってみた人にしか解らないだろう。
マニアックといえばマニアック。
しかし、研ぐということは切れる刃先を作ることなので、致し方ない。
2024/10/18
水は地球の引力を感じながら平面を作る。
舟はその力を引き受けながら浮かぶ人工物だ。
人の乗り物でもあるし、容積分の空気を乗せる器でもある。
小清水漸の展覧会「雲のひまの舟」を見た。
1969年から2024年の彫刻が並んでいる。
タイトルからイメージできるように、水を使った作品が多く出品されてたが、個人的には机の表面を刻んだ、家具と彫刻の間のような作品に惹かれる。
木材を規則的に彫った作品は特に見ごたえがあった。
屋上にはにぎやかな展示がなされていたが、やはり僕は寡黙な小清水漸が好きだな。
展覧会の帰りにこの写真を撮った。
傾いて壊れたプランター、傾きを修正するように育つ多肉植物。
ここにも引力が可視化された光景があった。
表現を孕んだものではない。
無作為という心地よさがあるとすると、恐らくこのような光景だと思う。
「もの派」の時代に育った僕の目は、こんな風景に感動する。
人の作るものにありがちな、お金の匂いがしないのもよい。
2024/10/12
「厠」でもよいし「TOILET」でも良い。
そういう文字が書かれた入り口が二ヶ所があって、一方は赤色文字、一方は青色文字だったとしよう。
恐らく女性は赤文字に、男性は青文字の小部屋に入っていくだろう。
画廊が主催する「モノクロの色気」というタイトルの展覧会が今日からはじまった。
2024/10/10
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モノクロの色気
2024.10.10thu-10.27sun 月・火・水休廊
15:00-21:00(最終日17:00まで)
稲田卓史
岩佐倖子
海野隆
岡田篤彦
日下部一司
古賀博美
角南正人
松田 彰
松谷博子
〒593-8325堺市西区鳳南町3-185
GALLERY&CAFE/BAR
Tel 072-273-3976
http://relic-gallery.jimdo.com
虫ピンで紙作品を展示する方法はよく行われている。
僕も時々それをやる。
しかし、何点か展示すると、ピンの傾きの不ぞろいが気になってくる。
できたら虫ピンもきちんと同じ角度ですべて打ち込みたい。
そう思って治具を作った。
ピンが適当な角度を持つように、治具に傾斜した面を作り、そこに磁石を貼り付けた。
磁石には溝を掘り、虫ピンがピタッと収まるようになっている。
これを壁にくっつけてピン打ちしたら、なんと同じ角度になります・・・っていう道具。
今度の展覧会で画廊の人にこの作業を頼むことにした。
他人に強いるのは気が引けるが、そうも言っておれない事情もある。
2024/10/09
写真の原石みたいな展示をしたいと思っていた。
写真の原石 とは妙な言い方だが、飾らず泥まみれのような状態を展示しようと思ったのだ。
額装もしないし、大きさや技法も年代も不ぞろいで、でもきちんと壁面に並べたい。
作品が自立し、誰が展示してもいいようなものをつくらないといけない、と思うことがあるがそういう作品ができない。
手のかかる厄介なことを考えてしまう。
展示の指示書を作った。
虫ピンを打つ角度を決める治具まで作って画廊に送ることにした。
本来なら、現地に行くべきところなのに、申し訳ない気持ちだ。
2024/10/08
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〝写す〟という世界 展
2024年10月26日(土)-11月9日(土)
営業日時:会期中の木、金、土の13:00-18:00
大木啓至
日下部一司
小塚康成
清野祥一
Marie Gallery
〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町三丁目 33-7 1F
Tel & Fax:03-6321-3442
E-mail:info@mariegallery.com
https://www.mariegallery.com
足を延ばして徘徊する。
徘徊とは言いながら目的もある。
写真撮影だ。
作品制作がだんだん写真へとウエイトが傾き、アトリエにこもるような感覚で歩き回る。
歩きながら、取るに足らないものをファインダー越しに見て回る。
徘徊芸術という分野さ。
ついでに銭湯や温泉に入るのが楽しみだ。
風呂屋の煙突を見つけて近寄っていくと、たいがい廃業している。
人の居ない商店街と、煙突だけ残った風呂屋跡。
そんな風景が多いな。
たまに営業中の銭湯があると、一風呂浴びる。
徘徊老人には風呂がクスリじゃわい。
2024/10/08
刃がよく切れることは大事だが、それ以上に鉋台が調整されていないと切れない。
そういうことを使いながら学んでいる。
なかなか習得ができない。
「70」の手習いだな。
ずっと一枚鉋を敬遠してきた。
ハードルの高さを知っていたから、深みに引き込まれるのが面倒だったせいだ。
一つの習得もできないくせに、新たな問題をかかえ込むのはどうかと思う。
と思いながら、刃のかたちに惹かれて古い一枚鉋を購入した。
「光」という文字と刃に空いたふたつの穴、それにこの角張ったかたち。
そういう造形的な誘惑に負けた。
刃を研ぎ、台の調整をして、試し使いをしてみた。
一枚鉋の削り口を実際に見たこともないのでなんとも言えないが、まあ切れる。
逆目に弱い欠点があるが、このシンプルなかたちと構造は魅力的だ。
刃がやや斜めにイスカのように仕込んである。
この微妙な角度も気になるところだ。
知らないことや間違っていることも含めて素人だから楽しめる。
素人の楽しみって、あるなあ。
写真が好き、ではなくカメラが好き。
という自分の過去を振り返りながら、同じような関わり方を大工道具に感じている。
2024/10/06
まとめ売りの砥石を買った。
6本も・・・。
届いたら、どうも「油砥石」らしい。
みんなベトベトに脂ぎっている。
油砥石という存在を忘れていた。
日本では水をつけて研ぐ砥石だが、アメリカなんかでは油砥石が主流だという。
狩猟民族には、脂ぎった砥石が似合う。
農耕民族はやっぱり水砥石かな・・・。
砥石は油田のあるようなところで採れるらしい。
アメリカでは・・・。
だから油砥石になるのだそうだ。
日本には基本的に油田がない。
水田ならある。
で、その6本の砥石をオレンジクリーナーで洗って面直しをしてみた。
そうしたら、なんと中身が水砥石、というのが3本あった。
日本砥石のくせにアメリカ砥石のまねをした砥石。
研いでみたらなかなかよい泥がでる。
水田には泥がつきものだ。
変わったかたち(底が美しく弧を描いている)のものがあったので、台をつくった。
台がないと砥石が転がって研ぐことができない。
この砥石がなかなかよい。
石の模様もお気に入りだ。
2024/10/03
思うところがあって、過剰に錆びた釘を探していた。
探してみると サビ釘 って無いものです。
こういうときのネット頼み・・・。
検索したら、なんと「錆びた釘 20本」を売っている人がいる。
芸術作品としてではなく、純粋なサビ釘として・・・。
300円だった。
送料込み。
薬品を使って錆びさせたら良いのではないかという意見もあるだろうが、ここはやはり 純粋なサビ釘 が欲しい。
この中にあった2本の釘が欲しくて買ってしまった。
2本分・・・1本150円という計算になる。
2024/10/01
1908年(明治38年)の 挿し絵広告 だ。
「メンダイン」はイギリス製の接着剤で、明治時代に日本に輸入された。
のちに膠を主原料として国産接着剤を開発(1923年・大正12 年)したたのが「セメダインA」だ。
輸入品「メンダイン」を市場から攻め出す・・・という外国製品に打ち勝つ闘志を込めて「攻め・ダイン」と命名したのだそうだ。
その後も改良を加えて日本初の合成接着剤「セメダインC」を1938年、昭和13年に発売した。
現在もセメダイン株式会社として各種接着剤を開発している。
で、その「セメダインC」 を百均で見つけて買った。
これと同じパッケージのもの(だったと思う)を幼いころ工作でよく使った思い出がある。
指についてぱりぱりになったこととか、つけすぎで逆にくっつかなかったり、プラスチックを溶かしたり・・・。
いろいろな失敗例を思い出す。
このロングセラー商品を、今使ったらもっと上手に使いこなせるはずだ。
そう思って購入してみた。
2024/10/01
堆積した泥が長い年月を経て固まり、石になる。
刃物を研ぐのに適した石を「砥石」として我々は使っている。
自然石なので数に限りもあるし、良質の砥石は宝石のような値段だ。
もう50年近く前に、父から小さな砥石をもらった。
当時はそういうものに興味もなかったので、しまい込んだままだった。
昨日それを発見し、手入れした。
いうまでもなく高価なものではない。
父が農作業の鎌を研ぐために買った廉価品だ。
もう父もこの世にはいないので、これが一種の形見のように思える。
薄い泥の層が見える砥石だ。
この種の砥石は、使っているうちに層に沿って剥がれる事がある。
自然石の宿命だ。
砥石を補強するために、使わない五面をすべて漆などで養生すると持ちがよいそうだ。
早速僕もそうすることにした。
ただ、漆ではなく人工漆を使った。
台も作った。
幅がないので庖丁や鉋刃には向かないが、鑿なら使えそうで、やってみたらよく研げる。
手入れをすると愛が深まるものだ。
2024/10/01