[問題作]

 

デザインがダサいというのは欠点だけれど それを支える性能がすばらしく、あのビンラディンが使っていたことから「ビンラディンモデル」とか「テロリストの時計」とそれは呼ばれているらしい。

時限爆弾の部品として改造されるなど、F-91W-1JFは意外なところから有名になった。

CASIOの腕時計の話です。

 

 

僕は文字盤周囲にある、あの青いラインがどうも好きになれず、先日似たような形のF-201WA-9AJFを購入した。

これは黄色のような金色が青の代わりにあしらわれた同じようなテイストの時計だ。

ネットで買ったら送料込みで1600円ほどだったけど、後日ヨドバシカメラで見たら同じ商品が850円で売られていた。

CASIOの腕時計の話です。

カシオのこのシリーズは異常に安いと思う。

 

 

で、ダサいというこのデザインにもファンがいる。

正確さ・頑丈さ・安さ、電池の持ちもほぼ10年といわれていて、「ダサかわいい」時計として人気を博しているようだ。

自分はそれほどのファンではないけど、その価格とバリエーションの多さに、ついのめり込みそうになってしまう。

僕は文字盤が針じゃないと駄目なタイプで液晶文字は苦手だ。

それなのにどこか惹かれるこのダサかわいさ・・・。

 

 

そんな時期に、ギャラリーヤマグチの山口さんから今度の個展の案内状デザインを提案していただいた。

それは、デザインとしての「問題作」だった。

 

 

常にかっこいいDMデザインのギャラリーヤマグチにしては、ダサく・冒険的というか・・・それでいて攻撃的だ。

ちょっとびびった。

そして、僕はそれに賛同してしまった。

きっと、カシオの時計にのめり込みそうな時期だったからに違いない。

 

 

完成した葉書を届けていただいた時、梱包を解いてなぜか笑った。

展覧会のために書いた僕の駄文が作品写真(部分)に重ねてある。

そのため、文字はアラビアの字みたいに見えて・・・もう日本語ではない。

読めないのである。

老眼の眼にはほぼ無理だ。

この段階ですでに「ブー」なのに、おもて面も「日下部一司」と「DOUBLE」が赤と黒で重ね刷りしてあり、それがしかもずれている。

だぶっている・・・というのかな。

 

 

「だぶる」という日本語をこれまで僕は使うことがあったが、「だぶる」は英語の「Double」が動詞化して日本語になったものらしい。

「道路」と「Road」くらいの音の類似かと思っていたけど・・・。

 

 

今回の案内状は、山口さんと僕の「だぶり」からできたものだ。

ダサかわいい、新種のオプアートみたいな味わいがある。

しかし、情報を正確に伝えるデザインとしては問題だ。

つまり「問題作」なのである。

2020/08/16


ネットで古い黒板を探していてこれを見つけた。

石盤(せきばん)と呼ばれる明治・大正期に使われた文房具である。

当時はこれの上に石筆(せきひつ)という蝋石で文字を書いた。

書いた文字は保存できないのでその都度消した。

書き残すのではなく、頭の中に記憶させるための道具として使われていたのだ。

手で覚える・書いて覚えるという記憶機器で、そういう姿勢に時代を感じる。

 

「大正拾五年四月一日」「タチノ」「ナカムラトシエ」と記してある。

大正15年は1926年、96年前だ。

4月1日といえば新学期。

「ナカムラトシエ」の名前が薄く「タチノ」が後から書かれた文字のように見える。

筆跡が同じなようなので、単に「ナカムラトシエ」を消しただけかもしれない。

「タチノ」は地名と考える方が自然かな。

 

この中身の石盤だけ拝借して展示物を作った。

素材と時間が作った美しい黒板だ。

2020/08/11


【Initializeという名前の「作品」】

ネット上で古い黒板を見つけて購入した。

チョークの跡がわずかに残っていて、右下には「I 」「K」のような文字がある。

Kの左隣にある「I」にちょっと書き足しをしたら「K」になることに気づき、ますます欲しくなって買ってしまった。

僕のイニシャルは「K.K.」だから、ちょっと手を入れるだけで自分のサインのようになる。

 

「Initialize」とはパソコン用語で、「初期化」を指す。

「K」と書き加えることで、僕の展示に必要な状態に初期化が成された訳だ。

展示に必要な最初の状態に整える・・・という意味で、これはイニシャライズされた黒板なのだ。

2020/08/06


【眺め】

信号待ちで止まった運転席から撮影した。

いつもここを通り、この場所が気になっていた。

この場所とは、ブロック穴の向こうに赤色が見える眺めのことだ。

単に車の赤色が円いブロックの隙間から見えるだけに過ぎない。

しかし、いつ見ても自分の目が不思議がる。

2020/08/04