刃物研ぎが高じると、砥石熱も上がる。

いくつか買い求めて試すうちに数が増えてしまった。

木の台に取り付けて使っている。

昨夜は窓辺に置いた一本の砥石が笑っていた。

信濃橋画廊での井上明彦さんとの2人展「be twin」(1997年)を思い出す。

2023/12/31

笑っている/井上明彦・日下部一司 信濃橋画廊 apron 1997
笑っている/井上明彦・日下部一司 信濃橋画廊 apron 1997

刃物研ぎにはまっている。

ノミやカンナ、包丁や剃刀。

剃刀は研ぐけど、使うことが無い。

怖いからだ。

 

幼い頃、父親が風呂場で散髪や顔剃りをしてくれた。

考えたら、僕は他人にそんな怖いことができない。

産毛まで切れる小さな刃物。

まして、髪の毛を剃るなんて、この一枚刃の刃物ではできない。

現代の文化人である僕は、自分の髪の毛を剃るのにT字剃刀(2枚刃)を使っている。

 

週に二回は剃刀で頭を剃る。

一ヶ月で8回の単純計算だ。

 

こんなふうに散髪代を払わなくなって久しい。

もう10年は経つのではないか。

それまでは散髪だけで(洗髪無し)1000円のリーズナブルな店に行っていた。

安い。

しかし、そんな激安店でも月に8回も行くと8000円。

一年で96000円になる。

これを10年続けたら960000円。

なんとすごい!

僕は10年でこれだけの節約をした。

 

ハゲの巧妙。

こんな言葉は無いか・・・。

その大金は何に消えたのだろう。

お金のマジックだな。

 

2023/12/30


相手が私を見ている。

ファインダーを覗いて対象を見ているつもりが、実は被写体から見つめられているのだ。

カメラの中の四角い窓は、自分を凝視する視線に気付く仕掛けでもある。

シャッターを押すことで、その瞬間を彼らの側に立って記録することになるのだろう。

カメラの中の四角いスクリーン、それを境とした「あちら側」と「こちら側」が緊張関係を保ちながら写しとられる。

写真はこのように立体的な構造をしている。

2023/12/17

 


きょうは展覧会の搬出に行って、クリアファイルをいただいた。

谷崎潤一郎の肉筆原稿をデザインしたもので、気にいってしまった。

推敲の痕跡が魅力的だ。

書き直した部分が真っ黒に消してある。

ここに何が書いてあったのだろう。

興味が尽きない。

 

原稿用紙そのものが素敵です。

松の枝の近くにある丸い形は、透けて見える僕の作業机のシミです。

何気なくそこに置いたら、たまたまこのような絵になった。

月のように見える。

 

2023/12/11


喜多川歌麿の「台所美人揃」という版画だ。

その原画から60円切手が2枚になるように連刷してある。

切り取り線(ミシン目)がいい位置に入っていて目にとまった。

この線によって歌麿の構図が見えてくる。

絵を見るための補助線のようだ。

 

人物の位置やしぐさが左右対称だ。

対称でありながら上手く崩している。

そのやり方が心憎い。

特に桶の扱いが見事だ。

サインの位置も良い。

 

切手に仕上げたデザイナーの手腕も優れている。

文字の配置が素晴らしい。

 

2023/12/04